世界的に認知度を増し、近年では多くの人々が日々意識するようになったSDGs(持続可能な開発目標)。そこで掲げられた17の目標は、自動車社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか。全12回の記事で、SDGsと自動車社会のいまと未来について考えます。
SDGsとは
まずは前提知識として、SDGsとはどのようなものかを解説します。自動車業界に限らず、さまざまなシーンで耳にするようになった「SDGs」というワードについて、一度ここでおさらいをしておきましょう。
持続可能な社会をつくるための開発目標
SDGsとは、2015年9月に開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で示されている、世界で取り組むべき開発目標のことです。2030年までに持続可能な社会を作るため、17の目標(ゴール)と169のターゲットが設定されています。
近年、さまざまなシーンでSDGsや関連するワードを見聞きする機会が増えました。どの業種や業界であっても、SDGsの目標につながる部分は必ずあります。最終的なゴールは遠く見えるかもしれません。しかし目標を達成するためには、皆が世界で起きている問題を自分事として捉えなければならないでしょう。
世界的な課題と17の目標
SDGsで掲げられている17の目標は、どれも世界で起きている問題を解決し、持続可能な社会を作るためのものです。いま世界で起きている課題と、それに対応するSDGs目標をコンパクトにまとめました。まずは関心を持ち、知ろうとすることが重要です。ぜひこの機会に私たちが目指すべき方向を再確認しましょう。
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01.貧困をなくそう
世界各国で、多くの人々が貧困から抜け出せずにいます。これは日本でも例外ではなく、貧困世帯が多いという問題は速やかに解決しなければなりません。
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02.飢餓をゼロに
安心して口に入れることができ、また栄養ニーズを満たす食をすべての人に届けることは、持続可能な社会をつくる上で必要不可欠です。食料を安定供給し、空腹に苦しむ人を一人でも減らすために、生産と流通の仕組みを再考する必要があります。
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03.すべての人に健康と福祉を
健康や福祉は、必要としているすべての人に行き届いてこそ意味を持つものです。大気汚染や交通事故による死傷者を減らすことも、ここで言う「健康」につながります。
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04.質の高い教育をみんなに
誰もが公平性の高い教育を受けることができる状態も、持続可能な社会において必須だとされています。「学びたいのに学べない」という人をなくすため、学習機会の用意や適切な教育の提供をしなければなりません。
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05.ジェンダー平等を実現しよう
政治や経済、公共分野における意思決定の場面や文化的な慣習において、ジェンダー平等を達成するという目標です。国や地域によりジェンダー観が異なるため、意識改革から始める必要があります。
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06.安全な水とトイレを世界中に
蛇口をひねればきれいな水が出てくるのは、当たり前のことではありません。インフラ整備や環境の改善を積極的に行い、皆が衛生的な環境に身を置けるようにしなければなりません。
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07.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
近年、自動車業界では急速にガソリン車から電気自動車へのシフトが進んでいます。しかしその「電気」も、持続可能な状態に保たなければならないのです。
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08.働きがいも経済成長も
多くの人は、人生において多くの時間を労働に費やします。だからこそ、人間らしくやりがいのある仕事ができるよう、環境の整備を行うべきだといえます。
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09.産業と技術革新の基盤をつくろう
持続可能な社会の実現と、産業の持続は両立できます。そのために、今から産業基盤をより強固かつ持続可能なものにしなければなりません。
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10.人や国の不平等をなくそう
現代においても、個人や国家による格差が色濃く残っているのが現実です。ここでいう「不平等」とは、主に金銭面での格差のことを指します。
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11.住み続けられるまちづくりを
文化や自然を守りつつ、安全で適切な基本的サービスをすべての人が受けられるようにすることが、これからのまちづくりに求められていることです。災害への対策や建築物のあり方など、考慮しなければならない要素は数多くあります。
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12.つくる責任 つかう責任
かつて当然のように行われてきた、「使い捨て」。これからの時代に必要なのは、廃棄物の発生防止や再生、リサイクルを推進して生産と消費のサイクルを持続可能にすることです。この目標は、特に自動車業界においても重視されています。
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13.気候変動に具体的な対策を
気候変動はすでに始まっています。早急に対策を打ち、気候変動の勢いに歯止めをかけなければなりません。
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14.海の豊かさを守ろう
海洋プラスチック問題や乱獲などの影響で、海の豊かさは損なわれつつあります。先を見据えて、今からできる対策は積極的に行っていくべきなのです。
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15.陸の豊かさも守ろう
この目標は、過度な森林伐採や砂漠化を抑制し、森林や湿地、山地などの生態系を保全することを目的としています。すぐにでも、動植物やそれらが住まう環境を守るアクションが必要です。
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16.平和と公正をすべての人に
現在もなお、世界には争いが絶えない国や地域があります。あらゆる争いをなくし、理不尽な暴力は撲滅しなければなりません。
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17.パートナーシップで目標を達成しよう
世界的な協力なくして、持続可能な社会の実現はできません。開発途上国への支援や公平な貿易体制の構築を通じ、皆で足並みを揃える必要があります。
自動車の未来とSDGs
ここから、持続可能な社会に向け、「自動車や業界がどのように変わっていくべきか」という話題に移ります。自動車を取り巻く環境は、これからも変化し続けることでしょう。その中で、自動車メーカーは舵取りをしなければなりません。
変化を余儀なくされる自動車業界
今、自動車業界では100年に1度のレベルで変革が起きています。最も大きいのは、ガソリン車から電気自動車への移行でしょう。政府が2021年に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2035年までに、新車で販売する車をすべて電気自動車化すると決定しました。
また、資源の枯渇や再利用のニーズ上昇に伴い、既存の自動車部品を再利用したり、リサイクルしたりするケースが増えています。実際、当社においても自動車部品の再利用を推進しています。(※1)
持続可能な社会の実現に向け、自動車を取り巻く環境は変化しているのです。
※1 eco-R 「中古部品(パーツ・デポ)
http://www.eco-r.jp/solution/parts
問われる自動車メーカーの責任
特に環境問題の解決や産業基盤の構築において、自動車メーカーが果たす社会的責任は非常に大きいといえます。持続可能な社会を築くために、自動車メーカーや関連企業は今後の道を模索しなければならないといえるでしょう。
限りある資源を有効に使い、利便性を確保したまま環境保全を行うことが求められている中、自動車メーカーがすべきことは「適切な生産と再利用の促進」でしょう。
資源の調達方法検討や有効活用に加え、フェアトレードの実施や製造過程での労働環境構築など、生産にかかわる部分で行わなければならないことはたくさんあります。
また、役目を終えた自動車についても、ただそのまま廃棄物として処理するのではなく、再利用できる部分は積極的に再利用を進める必要があります。電気自動車の利用推進に伴って発生する、使用済みバッテリーの処理にかかわる問題も、速やかに解決しなければなりません。
自動車のあり方は今後の社会に多大な影響を与える
SDGsの目標を達成するにあたって、自動車を取り巻く環境は変化を余儀なくされています。自動車メーカーや関連企業は、各々が背負う社会的な責任を自認し、できるアクションを積極的に行うべきだといえるでしょう。
次回以降のコラムでも、SDGsと自動車に関するトピックをお届けします。
ぜひ参考にしてみてください。
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