持続可能な社会を形成するために掲げられた「SDGs(持続可能な開発目標)」。今回は特に、17あるSDGsの目標から「つくる責任 つかう責任」をピックアップし、自動車メーカーが今後果たさなければならない責任について考えていきます。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」
SDGsの目標の中に、「つくる責任 つかう責任」というものがあります。ここでは、この目標がどのような内容を指すのか、また自動車メーカーはどのような責任を負うのか解説します。自動車の製造や販売に直結する内容であるため、メーカーに限らず自動車にかかわる事業者は皆考えるべきことでしょう。
持続可能な生産・消費のために
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」とは、最小限の資源で最大限の生産効果を生み出し、持続可能な生産と消費のサイクルを作ることを目標として定めています。
これまで私たちは、生産活動を行う際にたくさんの資源を消費してきました。そして、このペースで資源を消費し続けると、数十年後にはあらゆる資源が不足すると予測されています。そのため、継続的に生産活動を行うことができるようにするためには、生産と消費のあり方を見つめ直すことが必須になるでしょう。そこで、持続可能な社会をつくるための目標として12.「つくる責任 つかう責任」が掲げられました。
自動車を製造する際には、たくさんの資源を使用します。そのため、この「つくる責任」と「つかう責任」は自動車メーカーや関連企業の生産活動に直接関係します。
自動車メーカーの役割と責任
そのような状況下で、自動車メーカーはどのような役割を果たし、どのような責任を負うべきなのでしょうか。
まず、自動車メーカーは「製造業の持続可能化をリードする」という役割を果たすことになるのは必至です。近代から現代にかけて自動車が残した功績は大きく、自動車なくしてここまで経済が発展することはなかったといっても過言ではないでしょう。しかしその反面、自動車の製造過程や走行時、また処分する際に多くのエネルギー消費や二酸化炭素の排出が行われてきたのも事実です。これからは、多大な影響力を持つ存在として、製造業全般を持続可能な社会に向けてリードしていく役割が期待されます。
そして、合わせて「積極的かつ具体的な取り組みを行わなければならない」という責任も負うことになります。持続可能な社会の実現は、実際に行動を起こさなければなし得ることはできません。業界や社会に大きな影響を及ぼす自動車メーカーだからこそ、できる取り組みは積極的に行うことが期待されているのです。
自動車メーカーの取り組み
SDGsで掲げられた目標に対し、自動車業界における積極的な取り組みは重要です。ここからは、現時点で実際に自動車メーカーによって行われている取り組みをご紹介しつつ、今後自動車メーカーが行うべき取り組みについて考えていきます。
すでに各社に動きがみられる
持続可能な社会の実現に向け、自動車メーカーは動き始めています。ここでは特に、SDGs12.「つくる責任 つかう責任」に関わる取り組みについて取り上げます。
今回ご紹介するのは、世界の自動車業界を牽引するトヨタ自動車による、「MIRAI(ミライ)」の開発です。MIRAIは、水素と空気中の酸素を使って電気を作り、その電力で走行する燃料電池自動車です。走行時に発生するのは水のみで、二酸化炭素は排出しません。
自動車はこれまで二酸化炭素を発生するものがほとんどであったため、特に「つかう責任」が問われ続けていましたが、MIRAIのような燃料電池自動車の普及により、そうした責任を全うすることができるようになります。
燃料電池自動車でなくとも、電気自動車の開発・販売は、各社積極的に行っています。近い将来には自動車が走行時に排出する温室効果ガスは大幅に低減できるでしょう。もはや走行時に地球環境を破壊しないような車づくりをすることは自動車メーカーの責務になると考えられます。
今後すべき取り組みとは?
今後は、どのような取り組みを行うことが自動車メーカーに期待されるようになるのでしょうか。それは自動車部品の再利用です。
資源の枯渇が深刻化する中、最小限の資源で生産と消費のサイクルを回すために、部品の再利用は必要不可欠です。廃棄されるはずだった部品を再度活用することで、処分時に発生する二酸化炭素の量も削減することができます。
当社も自動車部品の再利用を積極的に推進し、新たに消費する資源を抑えられるように取り組んでいます。(※1)
※1 eco-R 「中古部品(パーツ・デポ)
http://www.eco-r.jp/solution/parts
今後はこのような取り組みがより勢いを増すと予想されます。そうした状況下で、新車販売を行うメーカーがパーツの再利用をどのように組み込んでいくかは重要になるでしょう。
いま求められる社会制度の整備と最適化
持続可能な社会を目指すのであれば、避けて通れないのが社会制度の整備です。ここでは、社会の流れや二酸化炭素の「排出権」という考え方など、マクロな規模で「SDGsと自動車」について考えてみましょう。
持続可能な社会に向けて常に変革していく必要がある
持続可能な社会をつくるためには、一部の組織や団体だけが動くのではなく、社会全体のあり方を変えなければなりません。
そして、行われる取り組みに対し、社会制度を整備したり最適化したりすることは必須だといえます。このあとご紹介する「排出権」の概念も、そのひとつです。
二酸化炭素の「排出権」を取引するという考え方
これは、排出可能な二酸化炭素の量を企業ごとに定め、その量に応じて「排出権」という権利を付与する仕組みです。実際に発生させた二酸化炭素が、排出権で規定された量よりも少なかった場合、上限を超えて二酸化炭素を排出している企業に排出権を売ることができます。
二酸化炭素を目視することはできませんが、生産活動に伴ってどれだけの二酸化炭素が発生するかは計ることができます。これからは、二酸化炭素の排出量を厳格に管理するという方向に舵取りが行われていくことでしょう。
脱炭素化の流れと電動化
排出権の話題とつながる部分もあるのが、「脱炭素化」のトピックです。これから社会的に脱炭素化が急速に進み、特に自動車に関しては電動化が主流になるでしょう。実際、政府は2035年までに新車販売される自動車をすべて電気自動車にするという方針を打ち出しています。充電設備の設置や廃バッテリー問題など、解決すべき課題は数多くありますが、着実に自動車を取り巻く状況が変化しているのは事実です。
負うべき責任は変化し続ける
今回は「つくる責任 つかう責任」について、自動車メーカーが行ってきた取り組み、そして今後行うべき取り組みをご紹介しました。時代の変化とともに自動車のあり方が問われる中、自動車メーカーが追うべき責任は常に変化しています。いま、各社臨機応変に対応する柔軟さが求められています。
お問い合わせ・ご依頼は
お気軽にご連絡ください。