化石燃料への依存がもたらすリスクとエネルギーのこれから

世界中で日々消費され続ける化石燃料。持続可能な社会を実現するためには、化石燃料からの脱却が必要不可欠です。今回のコラムでは現状起きている問題を元に、今後エネルギーはどのようなあり方を目指すべきかを考えていきます。

化石燃料への依存がもたらすリスク

産業革命以降、私たちの文明がここまで発達したのは化石燃料のおかげといっても過言ではありません。しかし、その一方で化石燃料の使用に伴う環境破壊や資源枯渇などの問題が数多く起こってきたのもまた事実です。本題に入る前に、まずは化石燃料に依存することがどのようなリスクをもたらすのか、順に3つご説明します。

気候変動の増長

まずは気候変動に関する懸念です。化石燃料を燃やすことで二酸化炭素が発生し、その結果地球の温暖化や気候変動を引き起こしてしまうというロジックは、すでによく知られているでしょう。そしてこのまま化石燃料の消費を続ければ、気候変動を増長させてしまうことは想像に難くありません。

また、持続可能な社会の実現に向けたSDGs(持続可能な開発目標)では、目標7として「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が、目標13として「気候変動に具体的な対策を」が掲げられています。化石燃料を使い続けることや、それによってもたらされる気候変動を止めなければならないという問題意識は、世界的に共通しているといえるでしょう。

資源の枯渇

化石燃料は天然ガスや石油などの資源のことを指しますが、これらが化石燃料と呼ばれる所以は、資源として使われるようになるまでの生成過程にあります。動植物の死骸は通常、ゆっくりと堆積してプランクトンによって分解されます。そしてそれらが地熱によって温められることで石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料が生成されるのです。

化石燃料が生成される過程は非常に長い年月をかけて進むため、動植物の死骸が堆積してもすぐに新たな燃料が生まれることはありません。そのため、このままのペースで化石燃料を消費し続けると、化石燃料が枯渇してしまいます。化石燃料への依存から脱却したい理由は、ここにもあるのです。

地政学リスク

時折「エネルギーの安全保障」というワードを耳にするようにもなりましたが、エネルギー資源を「どこから」「どのように」入手するかは安全保障上非常に重要な要素になってきます。特にエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている日本では、有事の際にエネルギーの輸入ができなくなってしまうと、経済活動を持続させることすら危ぶまれます。こうした地政学リスクも踏まえ、持続可能なエネルギーを自給できるようにすることが喫緊の課題となっているのです。

技術の進歩が妨げられる可能性も

このまま化石燃料を使い続ければ、いずれ化石燃料が枯渇してしまう日がくるでしょう。そうなれば、持続可能な代替エネルギーを活用することになる可能性が高いといえます。しかし、それまで化石燃料の活用を中心にしてきた社会をいきなり変革するのは非常に難しく、代替エネルギーの活用技術が十分でないままエネルギーの移行をしなければならなくなることすらあるかもしれません。エネルギーの変革と同時に、技術の進歩も促さなければならないのです。

最大限リスクを抑えたエネルギー供給を実現するために

さて、ここまででご紹介したようなリスクを解消または軽減しつつ安定したエネルギー供給を行うためには、どのようなことに取り組むべきなのでしょうか。ここでは、私たちが目指すべき大まかな方向性を2つご紹介します。

再生可能エネルギーの活用を進める

まずは化石燃料から再生可能エネルギーへとエネルギーの軸を移していくというものです。もちろん、いきなり全てのエネルギーを代替するのは現実的ではありませんが、少しずつ環境への負荷を最小限にとどめられるようなエネルギーの利活用を推進することで、相対的に化石燃料の使用割合は減少していくでしょう。

再生可能エネルギーは、太陽光発電や風力発電などすでに普及が進んでいるものに加え、バイオマス発電や水素を使った動力確保など多岐にわたります。設備の設置場所やエネルギーの用途などによって最適なエネルギーの創出方法は異なるため、どの再生可能エネルギーを推進すべきかは状況に応じて検討する必要があります。

社会全体で省エネを推進する

再生可能エネルギーへの切り替えを推進する一方で、社会全体で多くのエネルギーを消費する体質から脱却することも重要です。使用するエネルギーの総量が少なくなれば、当然生み出されなければならないエネルギーも少なく済みます。ただ、そのためには各分野での技術進歩が欠かせません。

自動車業界に関していえば、軽量素材を使用したり、エンジンの効率化を図ったりすることで必要最小限のエネルギーで走行できるようになるでしょう。すぐに化石燃料から脱却をすることは現実的ではないという観点からも、省エネルギー化を進めることは必要不可欠になります。

自動車とエネルギーの今後はどうなる?

さて、だんだん化石燃料の利用を最小限にとどめた社会のあり方をイメージできるようになってきましたでしょうか。気候変動や環境破壊に関する議論をするたび、必ずといっていいほど自動車はその話題に上ります。だからこそ、今後持続可能な社会を実現していくために、自動車業界が先陣を切らなければなりません。

世界的にEV化が進む

ここ数年で、主要な自動車メーカーを中心にEV(電気自動車)の導入が推進されています。EVは電力をエネルギーとして使用するため、走行時に排出する温室効果ガスをゼロにすることができるのが特長です。自動車メーカーの中にはEVしか製造していない企業もありますし、日本でも2035年以降ガソリン車やディーゼル車の新車販売ができなくなることから、そのような方針のメーカーが出てくることも予想されます。

急速な移行に懸念も

特に欧州の自動車メーカーが積極的に推進してきたEV化ですが、ガソリン車やディーゼル車からの急速な移行に懸念が生じているのもまた事実です。2023年2月には、欧州連合(EU)に対してドイツ政府が「e-fuel」を燃料とする内燃機関を搭載した自動車の販売を認めるよう要請を行いました。e-fuelとはカーボンニュートラル燃料の一種で、主に二酸化炭素や水素から構成される合成燃料のことです。ガソリンや軽油よりも環境負荷を抑えられるため、置き換えの対象となる燃料ではありますが、EVとは異なり走行時には二酸化炭素を排出することになります。完全なEV化推進に待ったをかける形になったドイツ政府の要請。今後の動向に注目が集まります。

既存の車両を使い続けることも重要に

EV化の推進を行う場合でも、車両の製造時には温室効果ガスが排出される上に、すぐに全てのガソリン車やディーゼル車をEV車に置き換えるのは現実的ではありません。いまある車両を長く使い続けるのもまた、環境への負荷を低減するという観点では有効といえます。当社エコアールでも、乗らなくなった車両からパーツを「リサイクル」することで、お客様の車に長く乗り続けてもらうための事業を展開しています。現状に即した方法で、環境への負荷を減らす取り組みをしていきましょう。

バランスをとったエネルギー変革が必要

今回は、化石燃料からの脱却や再生可能エネルギーへの移行という観点から、今後のエネルギーのあり方について考えてきました。地政学リスクや資源の枯渇について鑑みると、近い将来使用するエネルギーが変容していくのは必然だといえます。ただ、その過渡期にはより一層慎重にエネルギーの変革を進めなければならないでしょう。他のコラムでは、ひとつひとつの環境問題や自動車業界の役割などについてより詳しく考察しています。興味がございましたら、ぜひ読んでみてください。

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