違った観点からのコロナウイルス
みなさんいかがお過ごしでしょうか?ニュースや新聞では連日コロナ関連のニュースで持ち切りです。中でも先日報道された、志村けんさんの突然の他界は、驚きと衝撃、そして深い悲しみとコロナウイルスの底知れぬ怖さを、我々に突き付けた気がします。子供の頃から慣れ親しんだ、お笑い界の巨匠の死。心よりお悔やみ申し上げます。
さて、業界ニュースを読んでいたら、コロナウイルスがもたらしている違った側面の記事を読みました。みなさんと共有したいなと思いまして、ここに転記致しましたので、よろしかったら一読下さい。
出口が見えない新型コロナウィルス問題ですが、環境問題に関わっている方には若干の希望につながるお話もあるようなので、今日はそのあたりの話題について。
災害などの場合でも伝えられることがありますが、衛星写真の解析によると中国で発生している二酸化窒素の量が、このところ目に見えて減っているのだそうです。むろんこれは自動車が走らず、工場が動いていないことによるもので、同様にCO2の排出量も低下しているものと思われます。
そしておそらくこの効果は全世界的に発生しているはずなのですが、いつまで続くかにもよるものの、もしかすると気候変動に関わるモデルに影響を及ぼす程度の変化がもたらされてしまうのかもしれません。経済活動の停滞と言う大きな代償を支払う変化ではありますが、物事は一から十まで悪いことばかりではないという格言に沿ったものの見方としては、ある程度うなずけるところもあるように思います。
興味深い影響があると言われているのが航空運輸業界です。コロナウィルス騒ぎが起きる前の事ですが、世界の航空会社は2019年と2020年の実績値平均を目安としてCO2排出削減を行うことに合意していたのだそうです。予想していなかった事態によるものとはいえ、2020年の実績値は大きく落ち込むことが確実視されており、もしその数値が有効になるとすると、2021年以降の航空運輸業界はとても大きな排出削減義務を負うことになってしまいます。特殊事情ということで合意の見直しが図られる可能性が高いようですが、ウィルスの影響はこんなところにも及んでいる、と言う事例です。
環境問題とはいささか距離がありますが、大きな変化が生じているのは「働き方」だと思います。この騒ぎでテレビ会議の有効性が一気に認識され、関連するサービスを提供する会社はどこも大きく需要を伸ばしているようです。集音マイクやマイク付きヘッドセットなどテレワーク関連の商材もそうですし、グループウェアやセキュリティ関連の会社はどこも好業績を記録するのではないでしょうか。しかしそうすると、せっかく働き方改革で早く帰宅できるようになったのに結局「家で仕事」という縛りが復活する可能性も否定できないため、ちょっと注意が必要ですね。
話を環境に戻すと、注目されるのが経済の不振を打開するための財政政策です。日本のみならず世界各国で財政を動員した公共投資案件が数多く実施されるものと思います。代表的なところではインフラ、電力、都市開発などですが、これまでのような化石燃料依存型のものも提案されると思いますが、新たな財政出動を伴う場合には「ESG投資」の縛りを受けたものになる可能性もあるわけです。
つまり発電所なら火力発電ではなく太陽光などの再生可能エネルギーとなり、ビルを建てるならネットゼロエネルギーの認証を取る、都市開発であればコンパクトシティ化を進めるなど、時代にあった対応が提案される可能性も高いということです。ポイントはその効果がどこまで波及するか?ということであって、先進国だけが頑張っても限界があるわけです。むしろ途上国で、環境配慮型の投資が行われるようだとだいぶ様子も変わってくると思われます。
このような政策の方向性を議論されるはずだったのが今年後半に予定されていたCOP26ですが、すでに延期の方向で関係者間の調整が始まっているそうです。本会議もさることながら、これに先立つ事務レベルでの準備会合でさまざまな課題が話し合われるため、注目されるのはむしろそちらかもしれません。テレビ会議も駆使していただいて、ぜひ遅滞ない積極的な議論を期待したいですね。
(The Economist 3月26日号 ’The epidemic provides a chance to do good by the climate’ 参照) ***西田 純(環境戦略コンサルタント) 国連工業開発機関(UNIDO)に16年勤務の後、2008年にコンサルタントとして独立。サーキュラーエコノミーをテーマに企業の事例を研究している ***